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大津章敬が見る現在の社労士を取り巻く環境
ここでは代表社員の大津章敬が見る、現在の社労士を取り巻く環境についてお伝えしたいと思います。
経営分析の手法の一つにSWOT分析というものがあります。これは自社を取り巻く経営環境を、内部環境と外部環境とに分け、以下の4つの視点で分析するものです。
【内部環境】
Strength(強み)
Weakness(弱み)
【外部環境】
Opportunity(機会)
Threat(脅威)
内部環境は、自社の強み、弱みですので、これはそれぞれの社労士事務所で異なります。例えば弊法人の場合であれば、Strength(強み)は「20名近い社労士が在籍しており、各分野の高い専門性を有していること」や「グループに様々な士業が在籍しており、ワンストップで企業の様々な課題に対応することができること」などが挙げられます。一方、Weakness(弱み)としては「組織で運営しているため、代表がすべての顧客の担当をする訳ではない」ということが挙げられるかも知れません。
ここでお伝えしたいのは外部環境ということになりますが、代表的なものまとめると以下のようになるのではないかと思います。
社労士を取り巻く環境については、殊更、Threat(脅威)が強調されますが、AIの影響は社労士に限定されたものではなく、全産業に共通した内容であると同時に、AIの活用によってより業務が効率化するというプラスの面があることも意識する必要があります。そしてそれ以上に重要なのは、「Threat(脅威)」よりも「Opportunity(機会)」の方が大きいという事実です。上記記載では5つに止めましたが、実際にはもっと多くの「Opportunity(機会)」があり、圧倒的に「Threat(脅威)」よりも大きいというのが実感です。
詳細は次の単元で述べたいと思いますが、「1・2号業務(広い意味での手続き業務)に未来はない」とよく言われますが、それはあまりに表面的な意見であり、AIやHRTechによって一部なくなる業務があったり、形が変わることはあったとしても、依然として年金などの高い専門性が必要な業務であることは変わりませんし、それ以上に(比較的規模の大きな企業でその傾向が顕著ですが)人手不足により、従来は自社で行っていた社会保険手続きや給与計算業務を社外にアウトソースする動きが強く、むしろニーズとしては増加しています。
企業の経営資源には「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つがあるとされますが、少子化等の状況を見れば、労働力人口の減少トレンドが変わることはなく、今後は「ヒト」がもっとも重要な経営資源になっていくでしょう。我々、社労士はその「ヒト」を扱う専門士業です。環境の変化に対応するため、仕事の内容は変わっていくとしても、その重要性、社会からのニーズはますます高まっていくでしょう。
1号・2号・3号業務に関する考察
当社の採用にエントリーされる方の多くから聞かれるのが、「今後、1・2号業務はなくなっていくので、3号業務を中心に行いたい」という話。それは本当なのでしょうか?
この話は、最近出てきたものではなく、実は昭和の時代から言われ続けています。私(大津章敬)も平成8年に社労士登録をし、はじめて支部の行事に参加したときに先輩社労士から言われたことを覚えています。しかし、そこから約30年経過したいまでも多くの社労士は1・2号業務を中心に行い、事務所を経営しています。近年は生成AIの登場で仕事のやり方が大きく変わろうとしていますが、その影響は社労士業務だけでなく、あらゆる仕事に亘ります。このサイトをご覧いただいているみなさんには、SNSでの風評などではなく、事実に基づき、自分の頭で考えて結論を出して欲しいと願っています。
「今後、1・2号業務はなくなっていく」というのは間違った情報ではありますが、いまの業務が未来永劫、変わることなく、同じ価値であるという意味ではありません。電子申請の普及など、社労士業務への電子化の影響は確かに大きいですし、HRTechの普及で、従来、社労士が行っていた仕事の一部がITに置き換わっているのは事実です。しかし、それはマイナスばかりでもありません。私が名南に入社したとき、社労士部門には「職安巡回」という業務がありました。つまり、紙の書類を持って、職安を回るのです。いまでは電子申請でこの仕事は当然になくなり、無駄な移動をすることなく、より価値の高い仕事に時間を割くことができています。また給与計算の電子明細もそうですね。このように社労士の手続き業務の形は時代と共に変わりますが、なくなることは当面考えられません。
ちなみに、かつての1・2号業務は、社内にできる人材がいない中小・零細企業がメイン顧客でしたが、現在は深刻な人手不足から中堅以上企業が積極的に手続き等業務のアウトソーシングを進める時代となっています。よって、1・2号業務を独占業務としている社労士は今後、そのニーズを受け止めていく必要があり、当社も中堅以上企業のアウトソーシング業務に力を入れています。
少子高齢化による深刻な人手不足により「ヒト」がもっとも重要な経営資源となり、人材の確保・定着を狙うコンサルなど3号業務のニーズが増加しています。しかし、それと同時に1・2号業務のニーズも増加しています。社労士事務所の経営を考えた場合、やはり1・2号業務を行う中で顧客との関係性を強化し、相談業務やコンサルも拡大していくというのが王道となります。よって今後も、1号・2号・3号のいずれも重要な業務であることに変わりはありません。
社労士業務・業界に関するFAQ
Q1
社労士の知名度は他士業と比較して低いと感じますが、いかがでしょうか?
A1
確かに弁護士や税理士と比較するとまだまだ社会からの知名度は低いのかもしれません。しかし、実際に仕事をしている感覚としては、企業経営者の大半は社労士の仕事を認知されており、特に問題と感じることはありません。一方、学生などの知名度の低さは課題であり、全国社会保険労務士連合会では、その改善に向けた広報対策を進めています。
なお、近年、中央官庁においては中小企業の現場を理解している社労士の存在感が大きくなっており、多くの社労士が厚生労働省などの会議のメンバーに就任し、政策にも関与するようになっています。当社の宮武貴美も厚生労働省の「被用者保険の適用拡大に関する効果的な広報のためのアドバイザー会議」の構成員として、2024年10月の年金適用拡大の広報資料を整備に携わりました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212815_00035.html
また、代表の大津章敬も全国社会保険労務士会連合会の関係などから、以下のような場で政策に対する意見を述べています。
厚生労働省「労働基準関係法制研究会」参考人プレゼン
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41001.html
内閣府「規制改革推進会議 働き方・人への投資 ワーキング・グループ」有識者プレゼン
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_03human/231205/human03_agenda.html
中小企業庁「中小企業・小規模事業者の人材戦略に関する有識者検討会」オブザーバー
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shokibo_jinzai/001.html
Q2
社労士の多くが開業する中、勤務社労士として開業しない選択が正しいのか迷いがあります。
A2
弁護士や税理士などにはそもそも勤務という登録区分はありません。こう考えると社労士はそもそも企業や社労士事務所などに勤務して仕事をするということを当初から想定して制度設計がされている珍しい資格であると言うことができます。実際に2023年3月31日現在の登録者総数44,870人中、勤務・その他での登録者は16.679人であり、全体の37%にもなっています(出典:全国社会保険労務士連合会「社会保険労務士白書2023年版」)
https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/souken/2023/zentaiban.pdf
Q3
社労士事務所の勤務社労士の処遇が低いということをよく聞きますが、実態はどうなのでしょうか?
A3
これは勤務社労士として活躍してもらう環境を作るために業界全体として改善していく必要がある課題であり、現実的に非常に低い処遇に止まっている事務所が一定数あるようです。その原因としては以下の2つがあると考えています。A4